班女(はんじょ)
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能楽師 梅若基徳
ストーリー
旅の僧が奈良の春日明神に詣でると、植樹する若い女と出会い、猿沢の池へと導かれます。女は、昔帝の寵愛を失った采女がこの池へ身を投げて亡くなったと語り、その回向を頼みます。池のほとりで弔う僧の前に采女の霊が現れ、華やかな昔を思い出して舞い、回向を喜びます。
悲話であるものの、春らしさも漂う曲です。美奈保之伝では前半の一部が書略され、寵愛を失った采女の心情がクローズアップされます。
解 説
解 説
この能は帝の寵愛を受けたが後に召されなくなったのを嘆き、猿沢の池に入水自殺し、またその溺死体の有様が哀れで美しかったと事細かに描写し歌に詠むといった(その歌もこの曲では柿本人麿作を帝が哀れみ詠んだ歌として紹介しています)少しドロドロとした前段です。
(猿沢の池の色と水に浮かぶ采女の広がった髪の色の調和?がなんとも言えません・・・)後段ではその采女が宮中に召された時のことを懐古し静かな舞を舞い、僧に弔いを回向し池の中に沈んでいきます。
<美奈保之伝>になると前段はまず、常では次第、サシ、下歌、上歌、春日神社の謂われを語るのですがこれを全部省き、シテの呼びかけに台本を改作して(十五世観世元章改作)采女という女の語りの部分だけを強調した演出です。
後段もクセの舞を省き、序之舞も観世流では常とは違う呂中干にし、池の上で舞っている態にして袖を返さず拍子も踏まないといった演出方法がとられています。