楊貴妃(ようきひ)
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能楽師 梅若基徳
ストーリー
回国修行の僧が雨も降るので住吉で宿を借りるとそこには立派な太鼓と舞装束があり、謂れを女主人(前シテ)に尋ねると昔住吉の富士という楽人と浅間という楽人が宮中での管弦争いで富士が討たれ、それを悲しんだ富士の妻も太鼓を打って慰めていましたが、やがて亡くなったと語ると回向を頼み消え失せます。
(中入)僧が回向をすると夫の装束姿で妻の霊(後シテ)が現れ夫への慕情を述べ舞を舞い、やがて月も入り執心を捨てその姿を消します。現在物「富士太鼓」の後日曲。
解 説
曲名は「越天楽」より名付けられています。「楽」というと何となく明るくなりがちですが恋慕の思いを深く舞い、教えに「梅枝の楽は序之舞を舞うように」と夢幻能の世界をしっとりと作ることにあるみたいで、どこか「井筒」の後半を連想させるものを持っているような気がします。
舞の後も「面白や鶯の。声に誘引せられて」「これこそ女の夫を恋ふる。想夫恋の。楽の鼓」とあり夫婦相愛の思い出をしみじみと思い出す舞です。対して「富士太鼓」は舞の前後も「もどかしと太鼓打ちたるや」「持ちたる撥をば剣と定め」とあり、浅間への怨みを込めた狂乱の舞です。