俊成忠度(しゅんぜいただのり)
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能楽師 梅若基徳
Tadanori
ストーリー
忠度は平清盛の弟。忠度が薩摩守であったので、乗り物に只乗りすることを薩摩守という所以である。故藤原俊成の家人が出家し僧となって須磨に着くと、薪を背負った老人に出会い、今宵は桜の木の下で宿るように言われる。
忠度が葬られた桜だと聞かされ弔っていると武将姿の忠度の霊が現れ、昔自作の和歌が「千載集」に載ったが「読み人知らず」となっているのを嘆き、家定(俊成の息子)に訴えてほしいと頼む。そして俊成に和歌を託した後、一の谷で討たれるまでの様を語る。
そりゃ、自分の詠んだ自信作の和歌が「読み人知らず」だったらイヤだろうなぁと思いませんか。
解 説
この忠度は修羅物でありながら、かなり変わった作りになっています。
まず、ワキの旅僧がただの「諸国一見の僧」ではなく(このパターンが多いですね)、俊成の身内であるということです。忠度の訴えを聞いてもらうのに絶対必要な設定です。仮にもっと位の高い僧に来てもらったところで、忠度の希望(勅撰集に名を載せる)はかないませんでしょう。
次に変わっているのは、回向は頼むものの修羅道の苦しみを語ることなく、花の陰に隠れて消えていくという終わり方をする点です。和歌への執着と、勅撰集に名が載らない無念さを訴えるのが曲の主題であるためでしょう。
後シテ(忠度)が自分を討った六弥太になりかわり、型をするところ(自分の死骸を見て短冊を取ったりする)は能の決まりの手法ですが、いくら霊になったからって本人はイヤだろうなあとつくづく思います。
前シテの謡の節がややこしいので、大変です。