曲目

雲林院(うんりんいん)

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Unrinin

ストーリー

芦屋の(兵庫県)公光は幼い頃から伊勢物語を愛読していました。ある夜、公光は不思議な夢を見ます。都北山の雲林院の櫻の下に緋の袴を付けた女性と束帯した男性たたずみ、伊勢物語を読んでいます。近くにいた老人にたずねると、二人は二条の后と業平であると語ると夢から覚めます。

公光は正夢のよう思ったので雲林院に行きます。頃も春櫻の美しさに思わず一枝手折ってしまいます。すると老人が現れ、こののどかな日でも鳥の羽、風やそよ風にも花が散るのではないかと気をもむのに、なんという狼藉者であるととがめます。

公光は、花は貰うのも盗むのも風流心からだと云い、二人は花は折って楽しむもの、又、散る花を惜しむという二つの立場を古今集や和漢朗詠集を引いて問答をします。枝を折るのを惜しむのは次の春の花のためであり、手折るのはまだ観ていない人のためで、結局は花を愛する心から生まれた争いだと言い共に都の春を賞でます。

老人は公光に夢のことを聞き、その夢は業平が伊勢物語の秘事を授けようというのであろうから今夜はここで一夜を明かし夢の続きを見るよう言い残し消えていきます。(中入)北山のあたりに住む人が花見にやってきます。

公光が老人のことをたずねると、業平のことや「伊勢物語」の作者について語り、その老人は業平の霊と思われるのでここで奇特を待つようすすめます。公光は花の散りかかる木の下で仮寝しますとやがて業平が現れ伊勢物語の秘事を教え、業平と二条の后の恋の逃避行を語り、邂逅の夜遊の曲を舞います。やがて公光の夢は覚めるのでした。

解 説

雲林院は「今昔物語集」、「大鏡」の舞台となり、また「古今和歌集」の歌の名所でもありました。在原業平が「伊勢物語」の筋を夢で語るこの能「雲林院」にもなったりしましたが、時とともに寺運が衰えたそうです。

その後復興され大徳寺付属の寺となりましたが、応仁の乱の戦火により廃絶してしまったそうです。現在は、地名としてその名が残り、また堂宇としてわずかに観音堂が残るのみであるようです。

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