曲目

井筒(いづつ)

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Izutsu

ストーリー

奈良の参詣をすませた諸国一見の僧(ワキ)が初瀬へ向かう途中在原寺に立ち寄り、業平とその妻紀有常の娘の後世を弔っていると里の女(前シテ)が現れます。僧が女に問うと業平と有常の娘に心を寄せて弔っているのですと答え、さらに伊勢物語の歌を詠み「実は私こそ紀有常の娘なのです」と答え、井筒の陰に消えます。(中入)

その夜、僧の前に業平の形見である直衣をつけた有常の娘の霊が現れ、伊勢物語の歌に詠まれた往事をしのび舞い、冠直衣姿の自分を井戸に映し業平を追慕しますが夜明けの鐘とともに消え失せ、僧の夢は覚めます。

解 説

「幽玄の美」「複式夢幻能」「世阿弥」「三番目物、鬘物」…もうこの曲のためにあるような言葉です。この能には劇的な変化というものがありません。ただひたすら澄み切った透明な世界を作り上げています。

すべては業平の形見の直衣をまとい、井戸をのぞき込み水面に映る自分の姿に業平の面影を見るところに必然的に集約されて行きます。他の女性の所に行っても身を案じ、業平をただ待ち続け、最後に彼女がそこに見たものは業平なのか自分自身なのか・・・一体何だったのでしょうか?

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