曲目

楊貴妃(ようきひ)

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Yokihi

ストーリー

白楽天の「長恨歌」を素材にした曲。唐の玄宗皇帝は戦乱のもとになったとして殺された楊貴妃を、その死後も思い続けて忘れることができません。帝は神通力のある方士に命じて、楊貴妃の霊魂の行方を探させます。楊貴妃の魂は蓬莱宮という不老不死の国(常世)に帰っていたのでした。

逢えたしるしに、品物よりも帝と密かに交わした言葉を伺いたいという方士に、楊貴妃は、ある七夕の夜、天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝であろうと契り合ったことを伝え、自分は前世、天上界の仙女であり、帝への思慕を残しながら、また蓬莱宮に帰らざるを得なかったことを語り、美しく名残の舞を舞います。

解 説

この能は「本三番目」と言われる女性ヒロイン物ですが、他の三番目物のように前シテはヒロインの仮の姿で現れ、後シテで僧の夢の中に出て来て在りし日の昔を語るといった「複式夢幻能」とは違い、一場面物で(ワキの移動はあるが)現世の人がシテの住む現世とは違う世界に行って在りし日の思い出を聞き、

また現世に帰ってくるところや、シテが異国中国の人で現実には死んでいるのですが幽霊でもなく、しかも仙界に住む仙女であったいう設定にしてある点が他の能と大きく違います。ですから観る側、演じる側とも少しイメージを膨らませて考える事が必要なのではないかと思います。でも行ったことも見たこともない「仙界」とはどんな世界なのでしょうね。

また「仙界」では永遠の命がある楊貴妃なのですが、それだけに玄宗皇帝への恋慕と哀愁の気持ちは永遠に背負わなければならない悲しさというものがこの曲にはあると思います。

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