曲目

融(とおる)

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Tooru

ストーリー

東国から上京した旅僧(ワキ)が、中秋名月の六条河原院を見物しているところに、一人の老翁(前シテ)が田子を持ち現れます。

老翁は旅僧に尋ねられるまま、この河原院こそ融の大臣が陸奥の塩釜の景色を移したところであることや、僧に辺りの名所を教え、田子で潮を汲む様を見せますが、やがて姿を消します。(中入)その夜、融大臣の霊(後シテ)が現れ、名月の下、優雅な舞を見せ、夜明けとともに月の都へと去って行きます。

解 説

『月』をテーマにこの世には永遠というものはなく、廃墟と化した栄華の跡を懐かしみ惜しむといった曲です。そこにかつてのヒーローが現れ、優雅な舞を舞います。情景も姿もとても美しくきらびやかなのですが、それだけでなくなぜか最後に空しさの残る世阿弥の傑作です。

河原院での贅の限りをつくした生活は、今のレベルではかんがえられないものだったでしょう。当然それだけ贅沢なものを相続できる訳もなく、廃墟となった当時は凄まじい様子だったのではないでしょうか。また、この曲は珍しく僧が読経せず、融の霊を「月の精」的に昇華させ舞の小書も様々あります。

今回は「舞返」の小書により五段早舞を常の型と替ノ型「クツロギ」を二回舞い融の遊興さと優美さを強調します。

また、「十三段之舞」は、早舞五段、早舞五段、急之舞三段というまさに舞尽くしの小書です。

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