鞍馬天狗（くらまてんぐ）

Kuramatengu

ストーリー

鞍馬山の奥、僧正が谷に住むという山伏は鞍馬寺で花見があると聞きやってきます。東谷の僧は西谷からの誘いの手紙をもらい稚児をつれて花見をします。山伏の突然の邪魔に興を削がれたと僧一行は帰ってしまします。一人居残った牛若は山伏に同情し二人で花見をします。

牛若のやさしさに山伏は恋心さえ抱くようになります。牛若は山伏に源氏の不遇を語ると山伏も同情し、二人は花の名所を残りなくまわります。牛若が名をたずねると鞍馬山の大天狗であり、平家を滅ぼす兵法の奥義を授けるのでまた明日会うことを約束して雲に乗って飛び去ります。（中入）

牛若が身支度をして待っていると諸国の天狗を引き連れ大天狗が現れます。大天狗は漢の張良が黄石公に兵法の秘法を授けられた話をします。黄石公は張良の忍耐力を試すために履いていた靴をわざと落とし張良に履かせよと言い、張良の器量を見たのでした。大天狗は張良にも劣らぬ器量の持ち主であろうと兵法の奥義を授け、必ず平家を滅ぼすことが出来、いつも影身を離れず守護しましょうと言い残し、夕暮れの鞍馬山の梢に飛び去ります。

解　説

義経の並外れた強さの秘密には天狗などの「特別な力」もあったのではないかという人気曲です。能にはいろいろな天狗が登場します。仏法や人を邪魔する天狗が多い中で、本曲の天狗は人を助け強大な力を持った天狗です。

常は「赤頭」ですが「白頭」になるとスケールの大きいいかにも「大天狗」の風貌と力強さが増す演出になります。

また稚児達を花見ともいい能楽師の子はこの花見で初舞台を踏むことが多いようです。毎回舞台に「花」が咲いたように和やかになりこれもこの能の魅力と言えます。