曲目

定家(ていか)

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Teika

ストーリー

十月の紅葉が散りかかる季節に北国の僧(ワキ)が都に着くと時雨に遇い、雨宿りをしていると女(シテ)に声をかけられる。女はそこは「時雨の亭」という歌人藤原定家が建てたものだと答え、「偽りのなき世なり神無月誰が誠よりしぐれ初めけむ」と定家の歌も教える。時雨は昔と変わらないが、亭は荒れ寂くなってしまっている。

やがて女は蔦葛が這い纏う墓所に案内し、「ここは式子内親王のお墓です」と答える。そして内親王と定家との人目を忍ぶ深い関係と「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」と式子内親王の歌を延べ、その後式子内親王が亡くなってからも定家の執心が蔦葛となって「定家葛」と呼ばれている事を教え、「自分こそその式子内親王である」と供養を求め墓所の陰に消える。

僧は法華経を読経して弔うと墓所より蔦葛に縛められる式子内親王(後シテ)が現れる。やがて読経の力により蔦から解き放たれ報謝の舞を舞うが、また墓所の中に消え失せる。

この曲は「定家」という題名ながら藤原定家自身は舞台に登場せず内親王のお墓(作り物)に這い纏う蔦葛で表されます。姿がない分「執心」がよく表現されていると思います。

「大原御幸」「楊貴妃」「定家」の三曲は「三貴婦人」と呼ばれる曲ですが、若い男女の恋愛とかではなく、高貴な美しさの中に中年男女のドロドロとした行き場所のない「不倫愛」を描き出す曲です。

技術的な難易度でも謡では「九番習」ですが、梅若では能は「奥伝」となっています。

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