曲目

邯鄲(かんたん)

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Kantan

ストーリー

中国楚ノ国羊飛山の高僧に教えを乞うため旅に出た若者盧生(シテ)は、途中にある邯鄲の里で、昔仙人がくれたものだという枕を宿の女主(アイ)より借りて微睡みます。すると帝の勅使(ワキ)が現れ「盧生に位を譲ることになった」と言い、盧生は宮殿へ迎えられます。帝位につき栄華を極めること50年。喜びの舞を舞う中、突然宿の女主人の声で起こされる盧生。なんとこれまでの栄耀栄華はすべて粟のご飯が炊ける間の一瞬の夢であったのです。かくて人生は「一炊(睡)の夢」と悟った盧生は、清々しい気持ちで故郷へと帰っていきました。

解 説

この能は一人の青年の「自分にとって最良の夢(将来)とは?」というものを題材に、能の手法を効果的に使いとてもドラマティックなものに作り上げています。

まず、「中入」のない一場面物で人気曲なのですが、初めてご覧になられる方は、かなりの注意が必要です。

自己紹介→道行(旅)→邯鄲の里に着く→そこの枕で昼寝する→王位に就く→宮殿の中での歓楽→夢から醒めた後、元の邯鄲の宿→旅立ち というふうに舞台装置も変えずに、場所の設定が目まぐるしく変わります。作り物(一畳台、大宮)も最初から最後までありますが、それも宿と宮中に変わります。

ただ、夢に入った所は勅旨(ワキ)が起こしに来ます。今度その夢から醒めたところは宿の主人(狂言)が起こしに来ます。それさえ理解出来ればこの能を楽しめるのではないかと思います。

また数ある能の中、唯一ワキが現実的な登場ではなく非現実な夢の中の場面のみ登場するのも能的に面白いところです。(楊貴妃のように現実から死後の世界に行くのもあるが一応現実的な人です)

この能の難しさは、勿論主人公の変わりゆくとても複雑な心理描写なのですが、宮中を表わす作り物での「楽」という舞が演者にとっても観る方にとってもひとつの見所だと思います。いかにして狭い一畳台を宮殿で舞ってるように大きく雄大に見せるかということと、また舞の途中、その宮殿から拍子を踏み外し落ちそうになり夢から醒めそうになるところがあり、技術的にも大変難しいところです。

人は王になり富も栄誉も不老長寿もすべてを手に入れて、それが五十年続き、これからも永遠に続くと思っていたのが実はそれがご飯が炊けるほんのちょっとの間だったら・・・どうします?

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