曲目

安達原(あだちがはら)

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Adachigahara

ストーリー

奥州・安達原で行き暮れた、熊野の山伏・祐慶一行が野中に一軒家を見つけ、一夜の宿を請う。家主の老女は一旦断るが、たっての願いを聴き入れ山伏たちを家に入れる。家の中に枠かせ輪(糸繰車)があり、珍しさに目をとめた祐慶が頼むと、老女はそれを回して渡世の業に苦しむ果報のつたなさを嘆く。

夜も更け冷え込みが厳しくなった折、老女は山中へ薪を拾いに行くといい、その間決して自分の閨を覗くなと念を押す。しかし能力(のうりき)が祐慶の目を盗み覗いたところ、閨には死骸が夥しく積もり、腐臭凄まじい態であった。

能力の報告に驚いた一行が一目散に逃げ行くと、鬼女と変じた老女が火炎を放ち雷鳴とどろかせて追って来る。祐慶は五大明王の巧力を頼み、両者は激しくせめぎ合うが、鬼女はついに祈り伏せられ、恨みを残しながら消え去る。

解 説

この能も解説の必要もないくらい有名な曲ですが、この鬼女は今までの諸行を悔い、ただ一心の迷いで鬼女になってしまい、老いと輪廻というものの中で苦しみ続け、祐慶達に最後の救済を求めていて決して殺そうとかの思いは無かったと思います。

いわゆる鬼婆物語ですが、能ではもう一歩踏み込み人間の世の儚さ、悔いなどを嘆き、訴えます。鬼となるのも確かに今までは人を殺したり食べたりしていたけれど、「見ないで」と言ったのに約束を破られた怒り、悲しさからきたものと考えられます。

本当に彼女は後悔して過去を清算したかったかもしれません。小書(こがき=特殊演出)、「黒頭」は『強さ』を強調して演じます。普通前シテは「深井」という中年女性ですが、それより少し年のいった恐い面をかけます。「白頭」になるとお婆さんの面をかけ年齢による業の深さを強調しています。

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