石橋(しゃっきょう)
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能楽師 梅若基徳
Yugao
ストーリー
「源氏物語」夕顔の巻を原典とした、はかなくも美しい物語。今回は山ノ端之出、法味之伝という二つも小書が付いた珍しい演出となります。京の五条を通りがかった僧は、近くの家より和歌を詠む声が聞こえてくるので心惹かれ、歌の主である若い女にこの地のことを尋ねます。
女は「ここは昔、融の大臣の邸宅後で、光源氏は夕顔との逢瀬に通ったが、ある日物の怪に襲われ、あっけなく夕顔が亡くなってしまった」と語りました。月下、僧が弔いの読経を行う中、夕顔の霊が現れ、回向を喜ぶのでした。
解 説
この能の同じ題材に「半蔀」がありますがこちらの方が人気で「夕顔」は上演頻度がとても少ないです。おそらく「半蔀」のほうが半蔀戸や立花供養の生花の作り物による視覚的な見栄えのよさがあるからではないかなと思います。しかし個人的には「夕顔」のほうが「能」らしさがあるかなと思います。それだけに演じる人(全員)の表現力、品格が舞台の出来を左右する曲ではないでしょうか。
小書「山之端之伝」ではワキへ和歌を聞かせたり、シテ謡が地謡になったりします。夕顔が光源氏と知り合って間もない不安な心情を訴えた歌の心を強調する演出となっています。「法味之伝」では序之舞がイロエのように変わったりします。(舞の挿入場所、寸法など色々なパターンがあります)